●練馬区保健福祉部管理課長 吉本 卓裕氏

  運賃1/2で判断の目安作る

  タクとNPOの役割分担

 ――運賃2分の1の判断基準を作るきっかけは。
「タクシーとNPOのシステムが違うので国のガイドラインの『おおむね2分の1』をどう判断するか迷った。運営協の委員から区として判断基準を提示すべきと意見が出、案を作った」

 ――その結果は。
「『総額方式』はタクシー代表委員から反対があり合意できなかったが、策定した距離制の基準表は一定の評価があり、今後の距離制運賃を審査する目安として参考にすることになろう。共通の物差しを作り、あてはめて判断できれば公平性、効率性から審議しやすくなると考えた」

 ――2分の1判断基準の他、事後チェック体制、運行管理のあり方、研修制度など、他の自治体が手をつけないレベルまで議論が及んでいます。どこまで踏み込みますか。
「議論のせいで申請予定のNPOを待たせて申し訳ないが、なお多角的に議論を尽くし糸口を見いだしたい。2分の1判断では、個々のケースごとに判断し、判例の積み重ねでルール化する対応になるのかと思う」

 ――照会した国交省の回答は運営協に判断を委ねますと、すべて運営協任せです。運営協の責任が重いですね。
「移動困難者の移動の保障は行政の責務でもある。実際の運行は民間タクシー事業者やNPO事業者に担っていただくが、行政はそれらを調整することで責務を果たしたい」

 ――練馬区では移動困難者に対するサービス供給量は具体的にどのくらい足らないのですか。
「要介護者などのデータで一定程度足りないという認識は基本的にあるが、その方々がどの程度外出したいのか、現時点での実現度はどのくらいか、どんな交通機関が足りないのか、本当にニーズの調査はできていない。通院などなくては困る移動サービスからレクリエーションの移動まで各種需要はあると思うが、整理できていないのが現状だ」

――運営協で調査する考えはありますか。
「NPOの会員利用者の動向把握はできよう。ニーズの把握は当然必要と思うので、議論になれば調査していかないといけない」

 ――営利・非営利と本質の異なるタクシーとNPOを同一のテーブルで議論していく難しさはありますか。
「当然ある。タクシー業界に参加していただいたのは、運行のプロで安全管理などでは何歩も前に行っているからで、厳しいチェックをお願いしたい。厳しい目を乗り越えて認定されれば安全運行も保障される。逆にタクシー業界が需要にこたえきれていないからNPOが担ってきた実態もあり、おのおの役割分担をして移動困難者の問題に取り組むことで展開が広がる」

 ――コストがかかり過ぎるからタクシー業界は積極的になれない面があります。
「自治体も補助金の形で支援するのは難しい。どこに税金を投入すればいいかを考えると同時に、事業者もNPOがどう頑張り、どこまで自己負担にするか、タクシーの負担が大きいなら、どう規制を緩和するかなどあらゆる観点から検討する必要があろう」

 ――来年4月以降の運営協はどうしますか
「許可申請を審議し2年更新がある限り存在理由があるが、それだけでなく根本的に外出支援のレベルを上げるにはどうすべきか、タクシーとNPOが一緒にやれることはないか、タクシー券よりもこちらにお金を使った方がよい、といった意見があるなら、運営協で議論してもよい」

 ――地方分権の流れを自覚しますか。
「まるっきり権限を地方におろしてもらうなら別だが、23区内で区同士が隣接し合う中で、練馬区だけでタクシー業界が福祉輸送に参入しやすいように条件整備するのは難しい。工夫すれば福祉輸送が採算に乗る仕組み作りは、やはり国レベルで考えていただかないと」

東京交通新聞 2005.9.12(月)