●急増 痴呆高齢者グループホーム

 507市区町村、設置規制

事業者の指定権付与 介護保険法改正へ

 介護保険財政圧迫などを理由に、500を超える自治体が痴呆高齢者が共同生活をするグループホームの設置を実質的に規制していることが朝日新聞社の全国首長アンケートでわかった。規制を検討しているところも同程度あり、合わせると3100強ある全市区町村数の3分の1に達する。厚生労働省もグループホーム設置を市区町村がコントロールできるよう事業者を指定する権限を移す方針を固め、05年の通常国会に提出する介護保険法改正案に盛り込む。

 厚労省によると、グループホームは、介護保険導入直前の00年3月時点で266だったが、住宅業界などの参入もあって今年6月には20倍近い5246に増え、現在も1日5ヵ所以上のペースで急増している。

 特別養護老人ホームなどの施設は待機者が多いため介護家族にはグループホームの増設希望が根強い。一方、想定した以上のグループホームの急増は、域外からの入所者の集中を招き、市区町村ごとに決めている65歳以上の介護保険料の上昇やサービスの質の低下につながる、との懸念が出ている。

 調査には47都道府県知事と2838市区町村長が回答した。回答率は91%。市区町村長のうち、507が総定員や施設数など何らかの総量規制をしていると答え、498が検討中とした。都道府県では10県が規制を実施、3県が検討していると回答した。

 総量規制を実施、検討している自治体に理由を聞いたところ、「介護保険財政を圧迫する」が53%で最も多く、「高齢者の保険料上昇を抑えるため」が21%、「ほかの自治体からの入居が増えている」が11%だった。

 グループホームの事業者を指定する法的権限は知事にあり、市区町村は指定に必要な意見書を出すのを保留したり、事前に事業者に自粛を求めたりするなどの方法で実質的に規制している。

 厚労省は現状を踏まえ、グループホームを引き続き推進するものの、高齢者が住み慣れた地域で暮らせるようにするために新設する「地域密着型」サービスの一つと位置づけ、市区町村長にしてに権限を移すことで偏在や急増を防ぐ方針だ。

 また、現在は条件を満たしていれば指定することが原則のため、ホームの総定員が市区町村の介護事業計画を超える場合などに指定しない権限も認める。

 今回の朝日新聞の調査では、都市部で増えている有料老人ホームについても聞き、95市区町村が市区町村内の総定員に上限を設けるなどして規制を実施し、135市区町村が検討中と答えた。

キーワード「痴呆高齢者のグループホーム」

 住み慣れた地域で、5〜9人が家庭的な雰囲気で生活しながら介護を受ける仕組み。運営主体は45%が企業などの営利法人で、民家を改造したタイプやマンションタイプなどがある。運営費の9割(1割は自己負担)が介護保険から支払われる。介護保険からの給付のうち、65歳以上の住民が支払う保険料(原則18%)と市区町村の財政支出(12,5%)が直接の地元負担になる。各市区町村の事業計画以上にグループホームが増えると、給付が膨らみ保険料も上がる。

朝日新聞 2004.7.27(月)