●石川の介護施設 体にやけど、84歳死亡

  殺人容疑28歳職員逮捕

 石川県警津幡署は12日、勤務先の介護施設に入所している女性を殺害したとして、同県津幡町緑が丘の介護職員松田優容疑者(28)を殺人容疑で逮捕した。

 調べによると、松田容疑者は11日夜から12日朝にかけ、勤務先の同県かほく市中沼の「グループホームたかまつ」(NPO法人若葉経営)で、入所者の津幡町上大田の高山喜美子さん(84)を殺害した疑い。高山さんの顔と腹部にはやけどのあとがあり、同署は熱湯をかけるなどした可能性が高いと見ている。松田容疑者は「殺したことは間違いない」と容疑を認めているが、「ほかのことは話したくない」動機など詳しい供述を拒んでいるという。

 同施設には認知症のお年寄りら12人が共同生活を送っており、11日午後8時から翌朝6時までは松田容疑者が1人で勤務中だった。

 12日朝、出勤してきた女性職員が個室ベッドの上で高山さんが仰向けでぐったりしているのを見つけた。この時、松田容疑者も施設内の風呂場で意識がもうろうとした状態で倒れていた。近くには睡眠薬が落ちており、同署は松田容疑者が自殺を図ったものとみて調べている。松田容疑者は病院に運ばれたが命に別条はないという。

 施設側の説明によると、松田容疑者は1年3カ月前から週3回パートで夜勤をしており、最近ホームヘルプ−2級の免許を取得したばかりだった。同法人の橋本佳明理事は「松田容疑者はまじめでやさしく、入居者の家族からも信頼され、意欲的だった。信じられない」と話した。

密室化など問題指摘も

 厚労省によると、グループホームは介護保険導入直前の00年3月時点で266施設だったが、住宅業界などの参入もあって04年6月には5246と急増している。少人数で生活するための外部の目が届きにくい「密室化」の問題も指摘されている。

 同省は都道府県に対し、グループホームを訪れて介護の質などを調べる外部評価を義務づけているが、調査機関が少ないという。

 「高齢者虐待防止研究会」代表で大阪府立看護大の津村智恵子教授(地域看護)は「夜間、たった1人の職員で入所者全員のケアを担当していたというのが事実なら、施設としての態勢に問題があった可能性もある」と話す。さらに、「介護にあたる職員がちゃんとした教育を受けていないと認知症の人のケアをすることは難しい。こうじたケア技術や人権意識の確立が、一部の施設ではおざなりにされている可能性はないのか心配だ」としている。

朝日新聞 2005.2.13(日)