●事業者の不正請求

入院中のはずか・・・「ヘルパーが自宅で訪問介護」?

区、市が独自に指導

 訪問介護の利用者は入院中なのに、自宅をヘルパーが訪ねたことになっている−。こんな介護事業者の不正請求を東京都千代田区は6月、独自の要綱にもとづいて調査、2事業所に区民8人へ計約14万円、区へ約169万円を自主返還させた。増える不正請求に、事業所を監督する都道府県の対応を待っていては間に合わないためで、神戸、福岡、横浜の各市なども自力で指導に乗り出した。

 昨年4月、同区介護保険課に区内に住む高齢者夫婦の娘が相談に来たのがきっかけ。夫婦は要介護度が軽く、家族の援助に介護保険を使っていた。海外から帰省した娘が、両親の払った前月分の領収所を見ると13万円。保険限度額いっぱいでも自己負担は3万円未満のはず。事業所に問いに合わせると「では6万円でもいいです」と言われたという。

 それまで区は、電話による事業者への口頭指導にとどめていたが、別の利用者からも相談があったことから、本格調査を始めた。

 在宅介護サービスの指定事業者の調査・監督は本来、都道府県の仕事だが、都の調査担当者は8人。都内ではここ数年、月100ヵ所ずつのベースで新規事業者が参入しており、現在は約8300。とても手が回らない。介護保険法に市区町村も長も調査できるとの規定があることから、同区は昨年12月、調査手続きを定めた要綱を作成し、事前の調査・指導に乗り出した。

 利用者8人分について、過去1〜4年分の記録や請求書など1千万以上を照合した結果、不正・不当請求405件が判明した。

 介護計画書に「がん」と書かれていたが、実際は、がんではなかった。介護記録に「生活援助30分」とあったが、実際にはその時間帯に同じヘルパーが地区で訪問介護をしていた……。疑わしいサービスを事業者に示し、ケアマネジャーとヘルパーの介護報酬を、利用者と区に自主返還させた。

 足立区や新宿区、横浜市も今年、要綱を作成。神戸市や福岡市は、昨年すでにつくっている。

 千代田区や神戸市の要綱は、事業者に改善結果の報告を求めている。事業者が指導を拒めば、監督検眼を持つ都県へ連絡する。神戸市介護保険課は「事なかれ主義で動かないと思われないよう、苦情や情報にはきちっと対応する」と話す。

 行政指導では対応できない悪質な事業者は、都道府県が指定を取り消すが、00年度の年度の介護保険開始から、その件数は増え続けている。今年3月未までの指定取り消しなどに伴う返還額は計29億円余りに上げる。

朝日新聞 2004.7.27(月)